【時効の完成猶予又は更新について】越谷の弁護士|五十鈴総合法律事務所
2023/06/30
越谷の弁護士、五十鈴総合法律事務所です。
時効の完成猶予とは、一定の行為・事由があることを要件として、時効の完成を一定期間猶予することをいいます。
時効の更新とは、一定の行為があることを要件として、それまで進行していた時効期間がリセットされて新たな時効が進行することを言います。
時効の更新は、振出しに戻る点で時効の完成猶予と異なります。
1 時効の完成猶予となる事由
(1)裁判上の請求、支払督促、民事訴訟法275条1項の和解、民事調停法又は家事事件手続法による調停、破産手続参加、再生手続参加、更生手続参加(147条1項)
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から6か月を経過するまでの間が時効の完成猶予期間となります。
(2)強制執行、担保権の実行、民事執行法195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売、民事執行法196条に規定する財産開示手続又は同法204条に規定する第三者からの情報取得手続(148条1項)。
申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合には、その終了の時から6か月を経過するまでの期間が時効の完成猶予期間となります。
(3)仮差押え、仮処分(149条)
終了から6カ月を経過するまでの間が時効の完成猶予期間となります。
(4)催告(150条1項)
催告時から6か月を経過するまでの間が時効の完成猶予期間となります。なお、催告による時効の完成猶予期間中にされた再度の催告は、時効の完成猶予の効力を有しません。すなわち、催告の繰り返しは無効です。
(5)権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は完成しません(151条1項)。
ア その合意があった時から一年を経過した時
イ その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
ウ 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から6か月を経過した時
なお、時効の完成猶予期間中にされた再度の合意も有効です。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて5年を超えることができません(151条2項)。
また、催告による猶予期間中の合意、合意による猶予期間中の催告は、いずれも無効です(151条3項)。
(6)未成年者・成年被後見人の権利については、時効期間満了前6か月以内の間に法定代理人がいないとき(158条1項)
未成年者・成年被後見人が行為能力者となった時または法定代理人が就職した時から6か月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予されます。
(7)夫婦間の権利については、婚姻解消の時から6か月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予されます(159条)。
よって、消滅時効期間が経過している不貞行為に対する損害賠償請求権についても婚姻解消時から6か月を経過するまでの間は、元配偶者に対して行使できます(東京地判平成28年8月30日)。
(8)相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時、又は破産手続開始決定があった時から6か月を経過するまでの間は、時効の完成が猶予されます(160条)。
2 時効の更新となる事由
(1)確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したとき(147条2項)
支払督促の場合は、支払督促が確定した時、和解・調停の場合は、和解・調停が成立した時、破産・再生・更生手続参加の場合は、権利の確定に至り、手続が終了した時を指します。
(2)強制執行、担保権の実行、民事執行法195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売、民事執行法196条に規定する財産開示手続又は同法204条に規定する第三者からの情報取得手続が終了したとき(148条2項本文)。
(3)権利の承認があったとき(152条1項)
承認とは、債務者の意思表示ではなく、債権者からみて、権利の存在に対する認識を前提とした債務者の言動であると評価できるものを指します。典型例は弁済や支払期限の猶予の申し入れです。
また、判例は、消滅時効完成後の承認については、たとえ時効完成の事実を知らなかったときでも、信義則上、消滅時効の援用は許されないと判示しています(最判昭和41年4月20日)。
3 時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ主観的範囲
時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、効力が生じます(153条)。
148条1項各号(強制執行、担保権の実行等)、又は149条各号(仮差押え、仮処分)に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者(典型例は債務者)に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、148条又は149条による時効の完成猶予又は更新の効力を生じない点に注意が必要です(154条)。
(裁判上の請求等による時効の完成猶予及び更新)
第147条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 裁判上の請求
二 支払督促
三 民事訴訟法第二百七十五条第一項の和解又は民事調停法(昭和二十六年法律第二百二十二号)若しくは家事事件手続法(平成二十三年法律第五十二号)による調停
四 破産手続参加、再生手続参加又は更生手続参加
2 前項の場合において、確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。
(強制執行等による時効の完成猶予及び更新)
第148条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了する(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。
一 強制執行
二 担保権の実行
三 民事執行法(昭和五十四年法律第四号)第百九十五条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売
四 民事執行法第百九十六条に規定する財産開示手続又は同法第二百四条に規定する第三者からの情報取得手続
2 前項の場合には、時効は、同項各号に掲げる事由が終了した時から新たにその進行を始める。ただし、申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによってその事由が終了した場合は、この限りでない。
(仮差押え等による時効の完成猶予)
第149条 次に掲げる事由がある場合には、その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
一 仮差押え
二 仮処分
(催告による時効の完成猶予)
第150条 催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
2 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた再度の催告は、前項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。
(協議を行う旨の合意による時効の完成猶予)
第151条 権利についての協議を行う旨の合意が書面でされたときは、次に掲げる時のいずれか早い時までの間は、時効は、完成しない。
一 その合意があった時から一年を経過した時
二 その合意において当事者が協議を行う期間(一年に満たないものに限る。)を定めたときは、その期間を経過した時
三 当事者の一方から相手方に対して協議の続行を拒絶する旨の通知が書面でされたときは、その通知の時から六箇月を経過した時
2 前項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた再度の同項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有する。ただし、その効力は、時効の完成が猶予されなかったとすれば時効が完成すべき時から通じて五年を超えることができない。
3 催告によって時効の完成が猶予されている間にされた第一項の合意は、同項の規定による時効の完成猶予の効力を有しない。同項の規定により時効の完成が猶予されている間にされた催告についても、同様とする。
4 第一項の合意がその内容を記録した電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)によってされたときは、その合意は、書面によってされたものとみなして、前三項の規定を適用する。
5 前項の規定は、第一項第三号の通知について準用する。
(承認による時効の更新)
第152条 時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。
2 前項の承認をするには、相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない。
(時効の完成猶予又は更新の効力が及ぶ者の範囲)
第153条 第百四十七条又は第百四十八条の規定による時効の完成猶予又は更新は、完成猶予又は更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
2 第百四十九条から第百五十一条までの規定による時効の完成猶予は、完成猶予の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
3 前条の規定による時効の更新は、更新の事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ、その効力を有する。
第154条 第百四十八条第一項各号又は第百四十九条各号に掲げる事由に係る手続は、時効の利益を受ける者に対してしないときは、その者に通知をした後でなければ、第百四十八条又は第百四十九条の規定による時効の完成猶予又は更新の効力を生じない。
第155条から第157条まで 削除
(未成年者又は成年被後見人と時効の完成猶予)
第158条 時効の期間の満了前六箇月以内の間に未成年者又は成年被後見人に法定代理人がないときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その未成年者又は成年被後見人に対して、時効は、完成しない。
2 未成年者又は成年被後見人がその財産を管理する父、母又は後見人に対して権利を有するときは、その未成年者若しくは成年被後見人が行為能力者となった時又は後任の法定代理人が就職した時から六箇月を経過するまでの間は、その権利について、時効は、完成しない。
(夫婦間の権利の時効の完成猶予)
第159条 夫婦の一方が他の一方に対して有する権利については、婚姻の解消の時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(相続財産に関する時効の完成猶予)
第160条 相続財産に関しては、相続人が確定した時、管理人が選任された時又は破産手続開始の決定があった時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
(天災等による時効の完成猶予)
第161条 時効の期間の満了の時に当たり、天災その他避けることのできない事変のため第百四十七条第一項各号又は第百四十八条第一項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは、その障害が消滅した時から三箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。
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